日本財団 図書館


 

です。かつ、特別養護老人ホームの関係者の方がいらしたら申し訳ないのですが、特養ホームの施設そのものが人間らしい生活をする上でよいものであるとは限りません。多くの方々は、できれば自宅に住みたいと思っています。ちょっとした工夫、組み合わせ、知恵・力の出し方、時間の提供の仕方、そういったものを市民が協力しあい、それを行政側がちょっと後ろから押していただくだけでいろいろな問題の解決ができるわけです。
食事についてもそうです。年をとって特に1人暮らしになられると食生活がとても乱れます。特に女性は夫がいるときは食事を作るのですが、自分1人になりますと、ただ空腹感を満たせばいいという食生活になりがちです。そして体の栄養状態がどんどん悪くなり、骨粗鬆症になったり痴呆の進行が早まったりします。地域で1日に1食でも食事の配達ができるということが、いかに医療費を抑えることになるか、また病気を予防し、人との接触により人間的な生活を支援することに非常に大きな役割を果たしています。こういう分野をボランティアの側がしっかりとやっていかなくてはいけません。
つまり自治体とのパートナーシップをいう場合には、ダンスのパートナーを考えていただければいいのですが、何も踊れない人をいかに上手なパートナーが誘導してもダンスになりません。自治体側はしっかりとした体制があるのでここは主に頭の構造を変えてもらうだけでいいわけです。つまり住民・市民を頼りにしない、ないしはボランティアなどというものは気持ちの悪い人達だと思わずにしっかり仲良くしていこうという頭の構造に変えていただければいいのです。

 

●ボランティア団体の問題点
問題なのはボランティアの側で、率直に申し上げますと既存のボランティア団体の多くはパートナーシップに耐えられるだけの力と能力を持っていません。何故ならこれはボランティア団体だけの責任ではなく、1つは法制度上の不備で、どのボランティア団体にも人格を与えるというアメリカのNPOのような法律が日本にはありません。人格のない任意のグループですから、自治体が、あるボランティア団体がいいことをしているから応援しようとしても応援できないのです。人格がない任意団体は、社会的には認められていない幽霊のような存在です。そこに何らかの支援をするということは非常に困難であり、社会福祉協議会を通じてやっていくなど間接的にならざるを得ないのです。もう1つは、ボランティア団体の意識ないし努力の不足といった問題があります。つまりボランティア団体・ボランティア活動というものを、お金を使わないで困っている人に一方的に寄付をしたり、何らかの行為を通じて人を助けることがボランティアだという認識があるわけです。そういった一方通行型、慈善型のボランティア活動では駄目なのです。自分たちのボランティア団体をより強力にし、社会的に価値ある、地域社会において意味のある活動ができる団体としてどんどん大きくしていこうという意欲に欠けているように思えます。
今後は、課題を解決する能力を持っボランティア団体にならなければなりません。例えば、食事の事例で申し上げますと、多くの社協の中に登録されている食事のボランティア団体というのは月に平均1回の配食サービスをしています。考えれば分かると思いますが、月に1回の配食が食事をすることが困難な方の食生活というものを支えられるかどうか、という問題です。1人の人が月に平均90回食べる内の1回しか配達しないわけですから、その程度では問題解決型になっていないのです。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION